小柄の竹光三本を納品いたしました
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- 4月4日
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■小柄のツナギ三本を納品いたしました
特殊形状鞘のご依頼(2026年9月納品予定)のついでに、
小柄のツナギ(竹光)三本をご依頼いただき、このたび納品いたしました。
刀身のない小柄袋を、見た目と収まりの上で整えるための小さな仕事ですが、
いざ手を入れてみると、なかなか興味深い点の多い内容でした。
■ツナギの材について
ツナギは通常、朴木(ほおのき)で製作します。
ただ、今回の小柄ツナギは穂先が非常に直線的な形状であるため、
材の性質を考えて竹材を用いています。
刀のツナギとはまた少し勝手が違い、
小柄ならではの細さや形状に合わせて、
材の選択も変わってくるところが面白い点です。


■小柄の穂先について、少しだけ深掘り
小柄を見ていると、もちろん例外はあるものの、
不思議なくらい穂先まわりの規格が近いものが多く見受けられます。
時代や流派、拵えごとの事情によって差はありますし、
実際に「これはやや大きい」「これは細い」と感じるものもあります。
それでも数を見ていくと、穂先の寸法や納まり方には、
ある程度の“お約束”があるように思わされます。
一点物でありながら、実用品としての使い勝手や拵えへの収まりを考えれば、
自然と近い寸法に落ち着いていったのかもしれません。
このあたりは、刀装具の世界らしい面白さです。
■拵えに収まったままの年月と錆
一方で、小柄は拵えに収まったまま長い年月を過ごしてきたものが多く、
穂先だけが錆びている例に出会うことが珍しくありません。
柄の中に隠れている部分は比較的守られていても、
わずかに露出しやすい穂先側だけが傷んでいる。
そうした状態を見ると、では小柄は本来、
日常的に使われていたのか、それとも入れたままのことが多かったのか
と考えさせられます。
もし頻繁に抜いて使われ、拭われ、手入れされていたなら、
穂先だけが静かに錆び続けるような状態にはなりにくかったはずです。
そう考えると、少なくとも後年においては、
小柄は実用品というより、拵えの一部として収められたままになっていた例が
多かったのかもしれません。
もちろん、これは一概には言えません。
本当に日常の小用に使われていた時代もあったでしょうし、
持ち主の性格や身分、用途によって扱いは違ったはずです。
ただ、現存する穂先の傷み方を見ると、
「使い込まれて減った」というよりは、
「納められたまま時を過ごし、静かに傷んだ」ように見えるものが多い、
そんな印象を受けます。

■接着しないという判断
今回のような収まりの調整では、
マツヤニ、または木工用ボンドで接着する方法も考えられました。
ただ、内部に残った場合の影響も無視できません。
また、お客様ご自身で将来的に本身へ組み換えられる可能性もあるとのことでしたので、
今回はツナギと小柄袋を接着しない判断を取りました。
一見すると、固定してしまった方が親切にも思えます。
けれど、後々の扱いや可逆性を考えると、
あえて留めない方がよい場面もあります。
このあたりは修復というより、
後の自由を残すための判断に近いかもしれません。

■三本のうち二本は在銘
なお、今回拝見した三本のうち、二本は在銘でした。
こうなると気になってくるのは、
この三本がもともと揃いとして作られたものなのか、
それともそれぞれが単独の意匠だったのかという点です。
意匠の近さや収まりの雰囲気を見ると、
揃い物として考えたくなる気持ちもあります。
一方で、長い年月の中で別々のものが寄り合わされ、
結果として近しい表情を帯びている可能性も否定できません。
こうした想像が広がるのも、
銘のある小品を手にするときの面白さの一つです。
■小さな部品に残る「時」
小柄は刀装具全体の中では小さな部品ですが、
穂先の状態、錆び方、寸法の近さ、銘の有無――
そうした一つひとつの要素に、その品が過ごしてきた時間が現れます。
ほんの小さな部分ではありますが、
見ていくほどに、ただの付属品では片づけられない面白さがあります。
穂先ひとつにも、
その小柄が歩んできた時間が静かに残っているようで、
なかなか興味が尽きません。





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