甲冑と記憶と光 ― 金沢にて
- 店主

- 11月9日
- 読了時間: 2分
更新日:5 日前

2015年の冬、元先輩に誘われて城跡シンポジウムへ出かけた。
先輩は甲冑姿でデモンストレーションを行うという。
ボランティアで、事前のアポもない。
自分のミッションはただひとつ――漫画『センゴク』の作者、
宮下英樹先生にサインをもらうことだった。


前夜祭の夜、元先輩と二人で中華料理を楽しんだ。
あたたかい湯気と香辛料の香り、お酒の後味。
明日のことを語り合いながら、
どこか学生時代の延長のような夜だった。

翌朝、金沢城を見学した。
白壁に光が反射し、堀に青天が映っていた。
その壮麗な建築の中に、人の手の積み重ねを感じた。
「ものをつくる」ことの本質は、時を超えても変わらない。





先輩の甲冑は、すべて自作だった。
甲冑同好会に所属し、鉄を叩き、鋲を打ち、板を曲げ、ひとつずつ造り上げたという。
柄物は、本職の作業の合間に作った長巻(ながまき)。
その武具を手にする姿は、まるで“再生された戦国の記憶”そのものだった。





先輩は甲冑姿でボランティアのデモンストレーションを行う。
自分のミッションは――
漫画『センゴク』の作者、宮下英樹先生にサインをもらうこと。
準備もアポもない、まさに一騎打ちのような挑戦だった。
会場は戦国の記憶をそのまま呼び起こしたようだった。
鉄の輝き、冬の吐息の白、語り声。
そして幸運にも、サインはもらえた。
宮下先生は笑顔でペンを取り、
その瞬間、時間の層が静かに重なった気がした。


あの金沢の旅で感じたこと。
歴史に触れることは、過去を懐かしむことではなく、
いまをどう生きるかを問われることなのだと思う。
刃を直すという仕事もまた、
“記憶を再生する”という意味では同じ線上にある。
REMEMBER THE EDGE.
鋭さを、忘れるな。







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