修理事例のご紹介 鞘製作 東京都Aさま

更新日:8月27日

■元鞘から新しい鞘へ
本拵え用の鞘製作をご依頼いただきました。
今回のお刀は、2尺1寸をわずかに超える大刀です。
元鞘について、オーナー様が特に気にされていたのが丸い鞘尻でした。
脇差などでは見られる様式ですが、今回は新しく鞘を整えることになりました。
お刀そのものはヤフーオークションで比較的安価に入手されたとのことで、
その分、鞘へしっかりご予算を掛けていただきました。

■合わせ鞘から本造り鞘へ変更
合わせ鞘と本造り鞘では、ご予算が2倍以上違ってきます。
合わせ鞘は、寸法や反りの近い既製品を選び、現物に合わせて加工・調整するものです。
条件の合う鞘が見つかれば、費用を抑えられる非常に有効な方法ですが、
すべてのお刀へ対応できるわけではありません。
今回は、入るものはあっても、納まりという点では十分とはいえませんでした。
※先端のガタ残りなどがありました。
対して、本造り鞘は刀身に合わせて一から製作します。
今回は本造り(手作り鞘)での製作に方針転換されました。
完全に適合した鞘は、扱っていて気持ちが良いものです。
スルスルと刀身が納まっていく感覚は、合わせ鞘と比べるとやはり違います。

↑このお写真からは鍔の質感が見て取れると思います。
■鍔はそのまま活かすことに
近代の作と思われますが、SNSへ掲載した際の反応が意外に良く、
このような意匠の鍔を好まれる方が多いことも知りました。
当初は鍔の交換も検討していました。
しかし、代わりになる手頃な鍔がなかなか見つからず、
今回は暫定的にそのまま使用することになりました。
結果として、黒石目の渋い鞘が仕上がったことで、
以前より鍔との親和性も良くなったように思います。
金色メッキのシトドメも追加でご注文いただきました。
鍔に施された金色の象嵌ともよく馴染んでいます。

■栗形と鞘尻は水牛角製
栗形は、水牛の角材から手作業で削り出して製作しています。
鞘尻にも水牛角を使用しました。
水牛角は強度がありますので、実際に使用する鞘にも適した材料です。
鐺金具を取り付ける方法もありますが、金具には外れなどの心配もあります。
あえて申し上げれば、鐺金具は装飾的な意味合いも大きいものです。
今回は、実用面も考慮して水牛角による鞘尻としました。
■武道使用を考えた刃側の補強
武道で使用する鞘は、抜き差しを繰り返すことで刃側が少しずつ削れていきます。
そのため今回は、刃側にも水牛角材による補強を入れています。
完成した外観からは分かりにくい部分ですが、長く使用することを考えた工作です。
また一度破損しても部分修理が可能な設計になっております。
※写真は作例です

■黒石目塗を採用
塗りは「黒石目」です。
模擬刀用の合わせ鞘に施される一般的な黒石目塗と比べ、
下塗りを含めた工程数も多く、かなり手間を掛けて仕上げられています。
同じ「黒石目」という名称でも、下地や工程によって仕上がりには違いがあります。
今回の鞘は、落ち着きのある渋い仕上がりとなりました。
■鯉口の仕上げについて
鯉口付近の詳細です。
今回の仕様は、鑑賞を主目的とした最上級の仕上げと比較すると、
細部に若干の荒さを感じる部分があります。
実用を考えた通常仕様としては十分な仕上がりですが、
細部まで冴えた工作をご希望の場合には、あらかじめその旨をお申し付けください。
上撰の作業として手配することも可能です。

■完成-納品へ
当初予定していた合わせ鞘では納まりを出すことができず、
結果として本造り鞘へ変更することになりました。
費用は大きく変わりましたが、刀身にきちんと合わせて製作したことで、
元鞘で気になっていた鞘尻の姿も含めて整えることができました。
既製の合わせ鞘で対応できるか、本造り鞘が必要になるかは、
実際に刀身を合わせてみないと判断できない場合があります。
今回も、現物を確認したからこそ本造りへ切り替えた事例となりました。
最後に、個人名を伏せたうえで参考明細を掲載いたします。
※掲載の明細は、端数値引きを反映しない通常価格による参考金額です。
実際のご請求額とは異なります。
A様、このたびはご依頼いただき、誠にありがとうございました。
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