随想 関商工 刀剣科(刀職科)2

更新日:8月3日

ニュースリリースが出た際、X(旧Twitter)では少し触れましたが、
あらためてブログにも記録しておきます。
日本刀に限定した学科ではなく、もっと広い意味での刃物産業に関する取り組みですが、
関の刃物組合と岐阜大学との連携が始まったようです。
以前、「関市の学校に刀剣科のようなものができれば」と書いたことがありました。
今回の取り組みは、それとは少し方向が異なりますが、
地域の刃物産業を次の世代へつなぐという意味では、
大切な一歩になるのではないかと思います。
■小さな研磨工場で働いたこと
以前、零細のバフ研磨工場へ就職したことがあります。
半自動研磨機を使って品物を磨く仕事でした。
自分とほぼ同時に入社した男性がいたのですが、
作業の進め方を巡って諍いになり、結果として自分は早々に辞めてしまいました。
研磨へ回される品物の中には、深い傷が入っているものがありました。
そうしたものは、そのまま機械へ流しても仕上がらないため、
不良品として除くよう教えられていました。
ところが、その男性は一度除いた品物を再び戻し、機械へ流してきます。
「深い傷のあるものは弾くことになっている」と伝えましたが、
「俺はそんなことは聞いていない」
と受け入れてもらえず、大変困りました。
今思えば、こちらにも伝え方や立ち回り方に足りない部分があったのかもしれません。
その方も、今はどこかで元気に働いているのでしょうか。
■小さな工場が支えてきたもの
関の刃物産業は、大きなメーカーだけで成り立っているわけではありません。
研磨、刃付け、柄付け、塗装、部品加工など、
それぞれの工程を担う小さな工場や職人さんによって支えられてきました。
自分が短い期間だけ勤めたような小さな研磨工場も、
その一端を担っていたのだと思います。
しかし、後継者不足や設備の老朽化、材料費の上昇などを考えると、
これまでの産業構造がそのまま続いていくとは限りません。
一つの小さな工場が閉じれば、その仕事を別の誰かが引き継げるとも限らない。
表からは見えにくい工程ほど、
失われてからその重要性に気づくことになるのかもしれません。
■技術を残すための支援
もちろん、日本刀の世界にも協会や組合があり、
技術研修や後継者育成の取り組みは行われています。
関市に限らず、全国各地で仕事を続けている職人さんもいらっしゃいます。
ただ、個々の職人や業界団体の努力だけに任せるのではなく、
国、県、市など、公の側からの支援も必要ではないかと感じています。
技術を教える場所だけでなく、
学んだ人がその後も仕事を続けられる仕組みまで考えなければなりません。
職人を育てても、仕事を受ける方法が分からず、
生活が成り立たなければ続かないからです。
■職人への直接依頼が増える時代
SNSの発展に伴い、職人さんが直接お客様から仕事を受ける機会も増えてきました。
依頼する側も、職人さんの作品や発信を見比べ、
自分で選んで直接相談するようになっています。
作業内容に詳しく、自分で仕様を決められる方であれば、
職人さんへ直接依頼する方法は良いと思います。
間に人を挟まない分、希望が伝わりやすく、満足度も高くなるでしょう。
一方で、何を頼めばよいのか分からない方や、
複数の工程をまとめて進めたい方もいらっしゃいます。
そうした方には、状態を確認し、必要な作業を整理し、
各職人さんへつなぐ窓口も必要です。
■自分の強みを考える
自分も看板を掲げて仕事をしている以上、何を強みにするのか考え続けなければなりません。
自らすべての作業を行う職人ではありませんが、
お客様のご希望を聞き、修理の方向を整理し、
それぞれの専門職へ仕事をつないでいくことはできます。
直接依頼が増えていく時代だからこそ、単に仕事を取り次ぐだけでは意味がありません。
どこを直すべきか。何を残すべきか。どこへ費用をかけるべきか。
どの職人さんへお願いするのがよいか。
その判断と調整に、より大きな価値が求められるのだと思います。
関の刃物産業と岐阜大学との連携が、
どのような形へ発展していくのかはまだ分かりません。
それでも、産地の技術や仕事について考え、
次へつなぐ動きが始まったことには意味があります。
大きな取り組みも、小さな工場の仕事も、一本の刃物を作るうえではつながっています。
その流れが途切れないよう、自分も自分の立場でできることを続けていきたいと思います。




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