日本刀,諸工作事例(鞘塗)埼玉県I様


製作事例のご紹介です。
今回は、お客様がご自身で製作された鞘下地をお預かりし、
塗りの作業をご依頼いただきました。
当店でも長くお付き合いをいただいているお客様で、
主に部材のご購入をいただいております。
好きが高じて鞘製作を始められ、現在は研ぎの修行もなさっているとのことです。
柄巻きもご自身でなさるそうです。
現在70代半ばのお客様ですが、始められた時期を考えると、
非常に早い速度で習得されています。
本業が大工さんということもあり、木の扱いや道具の扱いに長けておられます。
お預かりした鞘下地を見た鞘師さんも、
「丁寧に作ってあるね」
と太鼓判を押すほどの出来でした。


■ご希望は乾漆黒石目塗
今回ご希望いただいた塗りは、乾漆黒石目塗です。
もともと高価な塗りですが、近年はさらに価格が高騰しております。
また、仕上がりまでの期間もかなり要します。
乾漆黒石目塗は、塗膜が強く、滑りが良いのが特徴です。
そのため、居合道で使用する鞘にも適した塗りです。

■カシュー塗りと本漆の香り
今回の乾漆黒石目塗は、ベースにカシュー、いわゆる代用漆を使用しています。
ただし、最終の艶出しの工程で本漆を擦り込むため、
仕上がった鞘からは漆の香りがします。
そのため、本漆の石目塗と勘違いされる方もいらっしゃいます。
見た目や香りだけでは分かりにくい部分ですが、
仕様としてはカシューをベースにした乾漆黒石目塗となります。

■塗りしろの調整について
鞘下地には、塗りしろとして、金具と木部の段差が葉書1枚程度つけてありました。
ただ、近年は塗りの仕様が少し変わっており、
現在はコピー用紙1枚分程度の段差が適当となっています。
そのため今回は、肉を盛るなどの修正作業を追加で行いました。
この修正分については、別途加算となっております。
塗りしろは、ほんのわずかな差に見えますが、仕上がりに関わる大切な部分です。
下地の状態がそのまま塗り上がりに影響するため、
持ち込み下地の場合は特に注意が必要です。

■金具付き鞘の際(キワ)の処理
今回の鞘には、鯉口や鐺の金具が付属していました。
金具が付く場合は、木部との際の処理が必要になります。
そのため、通常の塗り作業だけでなく、際の調整にも手間がかかります。
また、下地の段差調整も必要でした。
すべてが塗りに適した状態で整っていれば、こうした修正費用は発生しません。
しかし、金具との段差や塗りしろの状態によっては、
塗装前に追加の調整が必要となります。
■持ち込み鞘下地の注意点
鞘下地を持ち込みで塗りのみご依頼いただく場合、下地の出来が非常に重要になります。
今回のお客様の鞘下地は、とても丁寧に作られていました。
それでも、現在の塗り仕様に合わせるための細かな修正は必要でした。
分業が進んでいるため、以前であれば塗師さんが行っていたような下地の手直しを、
現在は鞘師さんにお願いする場合があります。
その場合、どうしても中間の費用が発生します。
持ち込みで鞘の塗りをご依頼いただく際は、
塗り前の修正が必要になる可能性があることをご承知おきください。
■修正費用が発生する場合
今回のように、
鯉口や鐺などの金具が付いている場合。
金具と木部の際の処理が必要な場合。
塗りしろの段差が現在の仕様と合わない場合。
下地の段差調整が必要な場合。
こうしたケースでは、塗り代とは別に修正費用が発生することがあります。
逆に、塗りに適した状態で鞘下地をお預かりできれば、修正費用を抑えることができます。
今後、鞘を持ち込みでご依頼いただく場合は、修正の有無にご注意ください。
■明細について
最後に、個人名を伏せたうえで明細を掲載いたします。
今回の金額は、2023年8月21日現在の参考価格です。
現在は材料費や工賃の変動により、同じ内容でも価格が変わる場合があります。
同様の塗りや、持ち込み鞘下地の塗装をご検討の方は、あくまで参考としてご覧ください。
このたびはご依頼いただき、誠にありがとうございました。
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