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製作事例 日本刀完全レストア 愛知県I様

  • 執筆者の写真: 店主
    店主
  • 2025年2月26日
  • 読了時間: 6分

更新日:7月3日



久々に、日本刀修理・レストアの製作事例をご紹介いたします。


今回ご相談いただいたお刀は、ご相談当初、登録証が存在しない状態でした。

そのため、まずはお客様の方で発見届を出していただき、

その後、登録審査を経て登録証を取得していただきました。


日本刀は、美術品として登録証がなければ、

原則としてお預かりや修理を進めることができません。

今回も、まずは登録の手続きを済ませていただいたうえで、

正式に修理のご依頼を承りました。


外装はかなり傷んだ状態でしたが、銘を拝見すると、

旧日本軍の軍刀として用いられていたお刀のようでした。


美濃伝のお刀が、また関の地へ戻ってきてくれた。

そんな気持ちにもなる一振でした。



■登録証の取得から始まったご依頼


今回のご相談では、最初の段階で登録証がありませんでした。


登録証のない日本刀は、そのまま修理のためにお預かりすることができません。

そのため、お客様にはまず発見届と登録の手続きを進めていただきました。


初めて日本刀を扱われる方にとって、

登録証や発見届の手続きは分かりにくい部分も多いと思います。

ただ、日本刀を正しく所持し、修理を進めるためには、とても大切な手順です。


今回は、お客様にきちんとお手続きを進めていただき、

登録証が交付されたあとで、正式にお預かりいたしました。


■傷んだ外装と、旧軍刀としての痕跡


お客様からお送りいただいた元の状態の写真を見ると、外装はかなり傷んでいました。


しかし、刀身の銘を見ると、旧日本軍の軍刀として用いられていたと思われる一振でした。


ただし今回の修理は、軍刀外装を復元するものではありません。

傷んだ外装の一部を活かしながら、通常の拵えとして整える方向でご依頼いただきました。


すべてを当時の姿に戻すのではなく、今後も保管・鑑賞しやすい形へ整える。

今回はそのためのフルレストアとなります。


■模範的なフルレストア事例として


今回のレストア内容は、かなり模範的なフルレストアとなりました。


傷んだ外装をそのまま使い続けるのではなく、

使える金具は活かしながら、必要な部分を新しく整えていく。


お刀そのものを無理に変えるのではなく、

これから先も安全に保管・鑑賞できるように、外装を整える。


そういう意味で、これから日本刀の修理や拵え直しをお考えの方には、

参考にしていただきやすい事例だと思います。


すべてを最高仕様にするのではなく、必要な部分に費用をかけ、

抑えられる部分は抑える。


そのうえで、できるだけ元の雰囲気を残す。


日本刀レストアでは、こうした判断がとても大切になります。



■鞘は既製品を使用してコストを調整


コストを抑える部分として、今回は鞘を完全な手作りではなく、

既製品の合わせ鞘を使用しました。


ただし、これはどのお刀でも可能な方法ではありません。

お刀の寸法、反り、身幅、重ねなどに合う鞘がある場合に限られます。


既製品の鞘がそのまま使えるわけではなく、お刀に合わせて調整を行います。

合うものが見つかれば、手作りの本造り鞘よりも費用を抑えやすい選択肢になります。


今回の場合は、幸い使用できる鞘がありましたので、

全体の費用を抑えるうえで大きな助けとなりました。


■柄は手作りで製作


鞘は既製品を活用しましたが、柄は手作りで製作しています。


柄は、実際に刀を保持する重要な部分です。

寸法、目釘穴の位置、握り具合、金具との納まりなどを、

お刀に合わせて作る必要があります。


今回は、元の柄にならい、黒染めを施工しました。

ただし、本漆ではございません。


見た目の雰囲気をできるだけ元の姿に寄せながら、

費用面も考慮した仕様となります。


■鮫皮は親粒なしのものを使用


柄に使用する鮫皮は、少しお安い「親粒」のないものを使用しました。


親粒とは、鮫皮の中でも大きく目立つ粒のことです。

親粒のある鮫皮は見栄えが良く、格式を感じさせますが、その分価格も上がります。


今回は、全体のご予算を見ながら、親粒なしの鮫皮を選択しました。


親粒がないからといって、柄としての機能が落ちるわけではありません。

費用を抑えつつ、きちんとした柄として仕立てるための現実的な選択です。



■ハバキは銅ハバキで製作


ハバキも新規で製作いたしました。


今回はコストダウンのため、銅ハバキで製作しています。


銀ハバキに比べると、銅ハバキは費用を抑えやすい仕様です。

ただし、近年は銀だけでなく銅も地金の値上がりが著しく、

以前ほど安価に作れるものではなくなってきています。


素材は比較的安価な銅を選びましたが、もちろん既製品ではなく、

お刀に合わせて手作りで製作しています。


ハバキは刀身と鞘、柄前の納まりに関わる非常に重要な部品です。

見た目は小さな部品ですが、ここが合っていないと全体の納まりに大きく影響します。


■元の金具をできるだけ活かす


今回、金具については、切羽とハバキ以外は流用しました。


傷んでいる外装でも、金具まで全て交換してしまうと、

元の雰囲気が大きく失われてしまいます。

使えるものは使い、無理のあるものは新しくする。

その判断が、レストアではとても大切です。


今回は、元の金具をできるだけ残しながら、必要な部分を新しく整える形となりました。


新しく作ることだけが修理ではありません。

残せるものを残し、これから使える状態へ整えることも、レストアの大切な考え方です。



■お客様提供の元の状態


掲載している元の状態のお写真は、お客様よりご提供いただいたものです。


かなり傷みのある状態でしたが、修理の方向性を決めるうえで、

元の写真はとても大切です。


どの金具を残すのか。

どこを新しくするのか。

元の雰囲気をどこまで引き継ぐのか。


こうした判断のためにも、修理前の写真は大きな手がかりになります。


■初心者のお客様へのご案内


今回のお客様は、日本刀に関しては初心者の方でした。


そのため、納品にあたっては、手入れ方法が記載されている書籍と、

手入れ道具一式をサービスさせていただきました。


日本刀は、修理して終わりではありません。

お手元に戻ったあと、どのように扱い、どのように保管していくかも大切です。


特に初めて日本刀を持たれる方にとっては、

手入れの方法や注意点が分からないことも多いと思います。

少しでも安心してお刀と向き合っていただけるよう、

できる範囲でご案内させていただきました。




■最後に


今回の修理は、登録証の取得から始まり、外装の確認、金具の流用、

柄の新規製作、既製鞘の調整、ハバキ製作まで行ったフルレストア事例となりました。


すべてを新品に置き換えるのではなく、使えるものは残し、必要な部分を整える。

費用を抑えられる部分は抑えながら、それでもきちんと形にする。


日本刀修理では、こうしたバランスがとても大切だと思います。


最後に、個人名を伏せたうえで、詳細な明細を掲載いたします。

同じような修理やレストアをご検討の方の参考になれば幸いです。


このたびはご依頼いただき、誠にありがとうございました。





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