製作事例 鞘製作&鞘修理 東京都Sさま
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- 2024年10月15日
- 読了時間: 4分
更新日:8月2日


日本刀修理・レストアの製作事例をご紹介いたします。
今回お預かりしたのは、元鞘である本造り鞘が、
広い範囲にわたって割れてしまったお刀です。
この拵えを製作した工房の主がすでに亡くなられており、
お客様は修理をどこへ相談すればよいのか困っておられました。
長く大切にされてきた拵えであっても、製作者が亡くなったり工房が閉じたりすると、
その後の修理先が見つからないことがあります。
今回は、傷んだ元鞘の状態を確認したうえで、新
しい鞘を製作するご依頼として承りました。
■関市で製作された、見慣れた仕様
元の拵えは、関市の工房で委託製作されたものでした。
金具の納まりや鞘の作り、塗りの仕様などは、こちらでもよく見知っているものでした。
そのため、新しく製作する鞘についても、元鞘だけが不自然に浮いてしまわないよう、
寸法や全体の雰囲気を確認しながら工作を進めました。
元の製作者とまったく同じものを作ることはできません。
それでも、これまで使われてきた拵えの姿を読み取り、
しい鞘を並べた際に大きな違和感が出ないよう心掛けました。

■新しい鞘は本造りで製作
新しい鞘は、刀身に合わせて一から製作する本造り鞘です。
既製品の鞘を加工する合わせ鞘ではなく、鞘師が刀身の反りや身幅、
重ねなどを確認し、内部を一本ずつ彫り合わせています。
元鞘が本造りでしたので、新しい鞘についても同等の構成としました。
長く使うことを考えれば、刀身に合わせて製作された本造り鞘には、
納まりや扱いやすさの面で大きな利点があります。
■元鞘に合わせた乾漆石目塗
塗りは、元鞘に合わせて乾漆石目塗を施しました。
乾漆石目塗は、当店で取り扱う鞘塗りの中でも上位に位置する仕様です。
新しい鞘だけを別の塗りにすると、拵え全体の印象が変わってしまいます。
今回は元の姿をできるだけ引き継ぐことを優先し、塗りの種類も元鞘に倣いました。
完成後は、新しく製作した鞘でありながら、
元の拵えに自然に納まる仕上がりとなりました。

■破棄予定だった元鞘にも修復の可能性
当初、広範囲に割れてしまった元鞘は、破棄する予定でした。
しかし、職人さんに現物を確認してもらったところ、
「鮫巻きによる補強で修理できる」
との判断がありました。
そこでお客様へ改めてご相談し、ご予算をいただいたうえで、
元鞘についても修復を行うことになりました。
新しい鞘を製作して終わるのではなく、残せる可能性のある元鞘も残す。
結果として、元の拵えが持っていた時間や雰囲気も、
引き続き手元に置いていただけることになりました。
■広範囲を覆う鮫巻き補強
通常の鮫巻き修理よりも割れの範囲が広かったため、
今回は広い範囲に鮫皮を巻いて補強しています。
鮫皮は装飾として使われるだけではなく、鞘の割れを抑える補強材としても用いられます。
今回のような修理が可能かどうかは、割れ方や鞘内部の状態によって異なります。
すべての割れた鞘を鮫巻きで直せるわけではありませんが、
現物を確認した結果、今回は修復可能と判断されました。
一度は処分を考えた元鞘を残すことができたのは、
今回の修理の大きな成果だったと思います。


■銀無垢製の栗形シトドメ
新しい鞘には、元鞘と同等の銀無垢製栗形シトドメ金具を、オプションで取り付けました。
小さな金具ではありますが、素材や仕上げによって鞘全体の印象は変わります。
元の拵えが持っていた品格を損なわないよう、細部についても仕様を揃えました。


■新しく作ることと、古いものを残すこと
今回のご依頼では、新しい本造り鞘を製作すると同時に、
破棄予定だった元鞘も修復することができました。
日本刀の修理では、何でも新しく作り直せばよいとは限りません。
新しくしなければならない部分は作り直し、残せるものには修理を施す。
その両方を組み合わせることで、安心して使える状態と、
元の拵えが持つ時間の両方を残せる場合があります。
また、元の製作工房に相談できなくなった拵えであっても、
仕様や状態を確認することで修理を引き継げることがあります。
同じように修理先が見つからず困っている方の参考になれば幸いです。
■金額について
今回は、ご依頼者様のご意向により明細の公開はいたしません。
鞘の割れ方や修復範囲、新規製作する鞘の仕様、塗り、
金具の有無によって費用は大きく変わります。
詳しい金額については、可能であれば現物の状態が分かる写真を添えて、
Eメールにてお問い合わせください。
このたびは、大切な拵えの修理をご依頼いただき、誠にありがとうございました。





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