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日本刀修理 製作事例-天正拵(住所非公開)〇〇さま

  • 執筆者の写真: 店主
    店主
  • 2025年4月6日
  • 読了時間: 5分

日本刀修理

■天正風拵えの製作事例


日本刀修理・日本刀レストアの製作事例です。


今回は、元の柄が合わせ柄であったお刀について、拵え製作のご依頼をいただきました。


当初は柄の製作を中心に、鞘は既製の合わせ鞘を予定しておりました。

しかし、せっかく拵えを整えるのであれば、ということで、

鞘も本拵えにて製作する流れとなりました。


仕様としては、返り角付きの天正拵えをご希望いただきました。


日本刀修理

■天正拵えとしての難しさ


天正拵えは、一見すると簡素に見える拵えですが、実際に製作するとなると、

細部の解釈がとても難しい拵えです。


特に今回は、頭の「張り」の形状について、私が思い描いていたものと、

職人さん側の解釈に差がありました。


下地の段階で仕上がってきた形状を見て、正直なところ、

私としては少し違和感がありました。

その点については職人さんとも意見を交わし、かなり細かく確認を行いました。


見本写真もお渡ししてありましたが、写真から読み取る形状と、

実際に手で作る形状とでは、どうしても解釈に差が出ます。


「こうしたい」という意図を、言葉や写真だけで正確に共有することの難しさを、

あらためて感じた案件でした。


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■「天正」と言い切ることへの迷い


今回の拵えは、方向性としては天正拵えを意識したものです。


ただ、個人的には、胸を張って「これは天正拵えです」と言い切るには、

少し心苦しさも残りました。

厳密に言えば、「天正風」と表現する方が自分の感覚には近いです。


もちろん、最終的にはお客様に下地の状態をご確認いただき、

柄なりについてもご了承をいただいたうえで仕上げています。

お客様が納得してくださったことは、本当にありがたく、救われた部分でもありました。


拵え製作では、職人の技術だけでなく、依頼者・窓口・職人の間で、

どこまで同じ完成形を共有できるかが大切になります。

今回の仕事は、その難しさを強く感じる事例でもありました。


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■豚革裏の緑色、ひねり巻きの柄


柄巻きは、豚革の裏を使用した緑色のひねり巻きです。


握り具合については、お客様より好評をいただきました。


鮫皮は腹合わせで仕立てています。

握りの太さや感触は、下地製作の時点で大きく決まってしまいます。


特に今回は、革巻きで仕上げることもあり、

巻いた後の厚みや手の収まりを見越して調整する必要がありました。

握りの調整は、何度もやり直せるものではありません。


一発で良いところへ持っていく難しさがありましたが、

結果として握り心地を気に入っていただけたことは、とても嬉しく思います。


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■鯉口の段付きについて


鯉口については、当初お客様より「フラットな形状を希望します」と伺っておりました。


一方で、鞘師さんには今回の仕様が天正拵えであることを何度も伝えていたため、

仕上がってきた鞘は天正らしい段付きの鯉口になっていました。


ここも、意思疎通の難しさが出た部分です。


お客様の「フラット」というご希望は、詳しく伺うと、

肥後拵えに見られるような高角の形状を避けたい、という意味合いでした。

今回のような控えめな段であれば問題ないとのことで、

最終的にはご了承いただくことができました。


とはいえ、こちらとしては反省の残る部分です。

「フラット」という言葉ひとつでも、人によって思い浮かべる形は違います。


今後は、こうした部分こそ、より具体的に写真や図で

確認していく必要があると感じました。


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■返り角と塗り上がりの逆算


返り角は、塗っていない下地の状態では、かなり頼りなく見えることがあります。


しかし、塗料が乗り、仕上げられていくことで、形状は大きく印象を変えます。

下地の段階では細く見えても、最終的な塗り上がりを逆算して作られています。


このあたりは、完成品だけを見ていると分かりにくい部分です。

拵えの下地は、完成後の姿から逆算して作る仕事でもあります。


今回も、下地の状態から塗り上がりを見越して返り角を整えていただきました。


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■追加で研ぎ直しのご依頼


拵え下地が上がった段階で、追加で研ぎ直しのご依頼もいただきました。


鞘が新しくなるタイミングで刀身も研ぎ直すことは、とても理に適っています。

新しい鞘に収める以上、刀身の状態も整えておくことで、

全体として気持ちよく納めることができます。


当初は別で脇差のお直しもご相談いただいておりましたが、

今回はご予算を大刀の方に集中された方が良いと判断し、そのようにご提案いたしました。


限られたご予算の中で、どこに重点を置くか。

修理では、こうした優先順位の判断も大切になります。


結果として、大刀の拵えと研ぎをしっかり整える形となりました。


■今回の反省と得たもの


今回の製作では、いくつか反省点もありました。


頭の張り。

鯉口の段付き。

天正拵えとしての解釈。

そして、見本写真を共有していても、細部の意図までは完全には伝わらないということ。


お客様にご納得いただけたことは本当にありがたいことでしたが、こちらとしては「もっと事前に詰められたのではないか」と思う部分もあります。


拵え製作は、単に部品を作る仕事ではありません。

お客様の希望、刀の姿、職人の解釈、実際に作れる形。

それらをすり合わせながら、最終的な一本にまとめていく仕事です。


今回は、その難しさと大切さをあらためて感じる案件となりました。


■匿名での掲載と明細について


今回のお客様は、イニシャルと都道府県も伏せてほしいとのご希望でした。


そのため、完全匿名にて製作事例として掲載させていただきます。

また、個人情報を伏せたうえで、最後に価格の明細も掲載いたします。


同じような拵え製作や日本刀修理をご検討の方の参考になれば幸いです。


このたびはご依頼いただき、誠にありがとうございました。



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