聖剣─ 取り戻された品格と、お守り刀になるまで
- 店主

- 11月13日
- 読了時間: 3分


聖剣との出会いと、最初のご相談
今回のご依頼は、心を砕きました。
最初は、軽い修正のつもりでお預かりしたのですが、
ふたを開けてみれば、最終的には大掛かりな仕事になりました。
刃渡りも十分にある諸刃の剣です。
一般的な「剣」は短いものが多いのですが、
この一振りは、まさに“聖剣”と呼びたくなる風格を持っていました。
遠方の工房へ託した研ぎと、思わぬ行き違い
研ぎについては、遠方の工房にお願いすることになりました。
本来であれば、研ぎは仕上げに行うべきところ、
他の段取りとの兼ね合いもあり、先に進める形になりました。
それに付随して、いくつかの加工も合わせて依頼しました。
初めてのお付き合いということもあり、
こちらとしても大きな期待を込めて託したのですが、
そこで思いがけないアクシデントが起きてしまいました。
詳細を書くのは控えますが、
そのままお客様へお返しするには忍びない状態になってしまい、
私自身の判断の甘さも含めて、深く反省するきっかけになりました。
関の職人たちと探した、リカバリーの道
すぐに関市内の職人方に相談し、
「なんとか元の品格に戻したい」という一心で、
皆でリカバリーの方法を模索しました。
こちらのわがままに近い相談にも耳を傾け、
「それなら、こうすればまだ戻せるかもしれない」と
一緒に道を探ってくださいました。
ある方は塗りの手配を、
ある方は細かな傷を消す段取りを、
ある方は全体のバランスを見て最終チェックを。
自分だけでは到底ここまで戻せなかった──
今回あらためて、そう実感させられました。
この場を借りて、関わってくださった職人の皆さまに、
心から感謝をお伝えしたいです。

O様と重ねた200通のメール
ご依頼主のO様とは、打ち合わせのほとんどをEメールで行いました。
一つひとつ確認していくうちに、
気づけばメールのやり取りは 200件を超えていました。
ここまでの熱量で付き合ってくださる方は、そう多くありません。
画面の向こうで、同じだけ本気になってくださっているのが伝わってきて、
こちらも自然と力が入りました。

聖剣と呼ぶにふさわしい金具の仕立て
金具まわりは、いわゆる“それらしい雰囲気”では終わらせたくありませんでした。
聖剣と呼ぶからには、細部まできちんと格を整えたい。
鍔・切羽・目貫には、24金メッキを施しました。
ギラギラと主張する金ではなく、
刀身や鞘の色味にそっと寄り添うような、やわらかな光を選んでいます。
縁・頭は、本金梨地で仕上げました。
手に取ると、細かな粒子が指先にかすかに触れるような、あの独特の質感です。
ここを手を抜かずに整えることで、
「聖剣」と呼ぶにふさわしい一振りになってくれたと感じています。
家のお守り刀として迎えられる一振り
この刀は、O様のご自宅でお守り刀として迎えられます。
ときどきふと視線を向けていただいて、
「あのとき任せてよかったな」と思っていただけたなら、作り手として本望です。
商売として見れば、決して割のいい仕事ではなかったかもしれません。
途中の行き違いや手直しもあり、
時間もコストも、当初の想定を大きく超えていきました。
それでも、関の職人方と力を合わせて、
「できる限りの形」でお返しすることができました。
利益の数字だけでは測れない一振り。
そういう仕事をさせていただけたことに、今はただ感謝しています。
最後に、個人情報を伏せた形で今回の明細を掲載いたします
(2025年11月現在の価格です)。
なお、研ぎ代は特価設定のため、同様のご依頼(剣)の場合は別途お見積もりとなります。
※鞘に文字がはいっており公開したくないご意向で 全体写真はNGの為,未掲載です









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