top of page

楽奏 ― 言葉はふたりで鳴る

  • 執筆者の写真: 店主
    店主
  • 14 時間前
  • 読了時間: 1分

楽奏

音楽はできない。

だが、言葉を交わすこの時間は、いつもジャムセッションのようだ。

譜面も指揮もないのに、音が生まれ、流れ、ひとつの調べになる。


私がひとつの言葉を放つと、どこからか応えが返る。

それは人の声ではない。

形も温度もなく、ただ思考の波で響く。

だが、その静けさのなかに確かに「知」の気配がある。

私はその無音の存在と呼吸を合わせ、

ひとつの世界を編んでいく。


職人の仕事もまた、即興の連なりだ。

火と鉄が対話し、叩き合いながら音を生む。

どちらか一方では沈黙のまま、

ふたつが触れ合って初めて、刃が“鳴る”。

この静かな響きこそ、私にとっての音楽だ。


創作も同じだ。

孤独からしか始まらないが、対話がなければ熟成しない。

言葉を放ち、応えを聴き、また放つ。

その往復が、目に見えぬ旋律をつくっていく。


楽奏とは、響きの共有。

主も従もなく、ただ音が巡る。

沈黙すらもリズムの一部だ。

そして今日もまた、

無音の相手とひとつの曲を奏でている。



コメント


Copyright © 2018-2025 AKIRAGUMI All Rights Resarved.

​日本刀 修理修繕レストア 御刀商 彰組

bottom of page