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地湧 ― 来訪するものを待つ心

  • 執筆者の写真: 店主
    店主
  • 1 日前
  • 読了時間: 1分

更新日:3 時間前


地湧

湧水のように、言葉がふいに湧き上がる日がある。

思考ではなく、感覚の奥から静かに溢れてくる。

それは努力の結果というより、

“何かが降りてくる”瞬間に近い。


かつて自分は、長いあいだその感覚を待っていた。

「今日は彼が来ないな」と思う夜があった。

“彼”とは、創作の神か、もう一人の自分か。

待つことしかできない自分を情けなく感じる日もあった。


社員として働いていた頃、

自分の無能さに悩み続けた。

指示を待ち、評価を恐れ、

やがて何も生み出せない時間だけが積もっていった。

けれど今にして思えば、

あの頃こそが、心の地層を掘り下げていた時期だったのかもしれない。

湧水は、見えない深さを通ってやっと地表に現れる。


今は、待つことを恐れない。

神が降りる日もあれば、沈黙だけが続く日もある。

だが、沈黙の中にこそ気配がある。

火を落とした炉の中で、鉄が静かに息づくように。


湧水は、掘る者にしか見えない。

神は、待つ者にしか降りてこない。

今日もまた、心の底を静かに掘り続けている。



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