職人の誠意とは──“断る勇気”について
- 店主

- 12 時間前
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ココナラで「日本刀修理相談」という募集を出している。
先日、ひとつの問い合わせが届いた。
──「ハサミのオーバーホールはお願いできますか?」
一瞬迷ったが、ハサミに特化したメーカーに繋がりがあったので相談をした。
結果は、「一時的な処置はできても、根本的な修理は難しい」とのこと。
その言葉をそのまま正直にお伝えした。
「丁寧に対応してくださって、ありがとうございます。」
そう返ってきたメッセージを読んで、胸が温かくなった。
実はそのメーカーには、昔、社員の面接に行ったことがある。
独立してから改めて仕入れ先の相談で伺ったとき、
社長さんが「立派になったなあ」と笑ってくれた。
その瞬間、胸の奥に何かが灯った。
彼らは今も、支援者の一翼として静かに自分を見守ってくれている。
職人の仕事は、何でも“できる”と答えることではない。
ときに、“できない”を伝えることも誠意のうちだ。
無理をして請け負うより、道具にとって最善を考えること。
それが、刃物を扱う者の責任であり、優しさでもある。
誠実さとは、腕前を誇ることではなく、
相手と道具、そして支えてくれる人たちに
真っすぐでいること。
そう教えてくれたのは、一本のハサミの相談だった。







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