日本刀,レストア修復事例 埼玉県N様
- 店主

- 2023年8月18日
- 読了時間: 6分
更新日:8月1日

■実家の解体で発見された日本刀4振の修復
実家を取り壊された際に発見された、日本刀4振の修復をご依頼いただきました。
内訳は短刀1振、脇差3振です。
長い間手入れがされていなかったため、それぞれに錆や外装の傷みが見られましたが、
登録証を取得していただいたうえで、順次修復を進めることとなりました。
4振とも、できる限り同時進行で作業を進めてまいりました。
このたび、その中で最も長い脇差が先に完成し、
最初のお引き渡しとなりましたのでご紹介いたします。

■発見された日本刀の登録から修復へ
今回のお刀は、ご実家の解体をきっかけに発見されたものです。
発見当初は登録証がありませんでしたので、お客様ご自身で必要な手続きを進め、
登録証を取得していただきました。
当店では、登録証の取得後にお刀をお預かりし、修理・修復を担当しております。
長い間しまわれていた日本刀が、家の解体や遺品整理によって
見つかることは珍しくありません。
錆びているから、外装が壊れているからといって、
必ずしも刀そのものの価値が失われているわけではありません。
状態を確認し、必要な手続きを行ったうえで修復すれば、
再び鑑賞・保管できる姿へ戻せる場合があります。
■まずは白鞘で健全な状態へ
将来的には、拵の再建もご予定とのことでした。
ただし、今回は最初から拵を製作するのではなく、
刀身の状態を確認し、健全な形で保管できる状態へ整えることを優先しました。
今回行った主な工程は、
・研ぎ
・白鞘製作
・ハバキの修理または新規製作
です。
白鞘は、研ぎ上がった刀身を保管するための外装です。
将来拵を製作する場合でも、白鞘があれば、拵から刀身を外して保管することができます。
そのため、長期的に日本刀を残していくうえでは、非常に大切なものとなります。
■元のハバキは可能な限り修理して再利用
4振すべてのハバキを無条件に作り直したわけではありません。
状態を確認し、修復可能なものについては、元のハバキを修理して再利用しています。
古い部品を残せることには、費用を抑えるだけでなく、
そのお刀がこれまで身に着けてきたものを引き継ぐ意味もあります。
一方で、損傷や寸法の問題から再利用が難しい場合は、新規製作が必要となります。
状態を見極めながら、修理と新規製作を使い分けました。
■銅無垢ハバキを新規製作
今回完成した脇差については、ハバキを新規製作いたしました。
素材は、比較的費用を抑えやすい銅無垢です。
近年は銀だけでなく、銅についても地金価格の上昇が続いており、
ハバキの製作価格にも影響が出ています。
今回は全体の修復費用とのバランスを考え、
もっともお求めやすい銅無垢ハバキをご提案いたしました。
素材は銅ですが、既製品ではありません。
刀身の形状に合わせ、白銀師が一つずつ手作りで製作しています。
■ハバキの模様は「祐乗」
今回のハバキには、「祐乗」と呼ばれる模様を施しています。
細かな線が重なった、落ち着きのある仕上げです。
同価格の仕上げとしては、ほかに、
・無地
・横やすり目
・庄内模様
などもお選びいただけます。
模様によってハバキの印象は大きく変わります。
拵との組み合わせや、お客様のお好みに合わせて選択することができます。
このほか、特殊な模様や各国風のハバキについても、
仕様によっては追加料金で製作可能です。


↑無地銅ハバキの作例です
■深い錆を落とすための下研ぎ
刀身には、長い年月による深い錆が発生していました。
通常の仕上げ研ぎだけでは対応できないため、
今回は研ぎ代とは別に、錆落としを目的とした下研ぎの費用を頂戴しております。
錆が深い場合、表面だけを軽く磨けばよいわけではありません。
刀の姿や肉置きを見ながら、どこまで錆を取り、
どこを残すのかを判断する必要があります。
無理にすべての傷みを取り切ろうとすると、刀身の形を崩してしまうこともあります。
研ぎは、ただ表面をきれいにする作業ではなく、
本来の姿を損なわない範囲で状態を整える仕事です。
また、刀身に大きな曲がりがある場合は、
研ぎとは別に曲がり修正の費用が必要となります。
■水牛角製の目釘座
白鞘には、水牛角製の目釘座を追加しています。
目釘穴の周囲に水牛角を入れることで、見た目が引き締まり、
目釘穴周辺の補強にもなります。
通常は追加オプションとなる加工ですが、
今回は鞘師さんのご厚意により、サービスで追加していただきました。
そのため、こちらの加工についてはご請求しておりません。


■4振を並行して進めた修復
作業は2月に開始し、最初のお引き渡しは8月となりました。
今回は1振だけではなく、短刀1振と脇差3振の計4振を、できる限り並行して進めています。
それぞれ刀身の状態や必要な工程が異なり、
研ぎ、ハバキ、白鞘の各職人の作業も必要となりました。
錆の深さや工程数の多さもあり、完成までにはやや長い期間を要しました。
最初に仕上がったのが、今回ご紹介している最も長い脇差です。
残る3振についても、それぞれの状態に合わせて順次修復を進めていきます。

■大きな欠点もなく、健全な姿へ
研ぎ上がった刀身を確認したところ、大きな鍛え割れ、
刃切れ、フクレなどは見当たりませんでした。
発見時にはかなり錆が進んでいましたが、
修復によって健全な姿を取り戻すことができました。
外装が傷み、刀身が錆びていても、研いでみなければ分からないことがあります。
今回の脇差は、長い間しまわれていた一振が、
再び白鞘に納まり、これから先へ残せる状態となりました。


■将来の拵再建に向けて
今回は白鞘仕立てまでとなりましたが、
お客様は将来的に拵を再建することも予定されています。
まずは研ぎ、ハバキ、白鞘によって刀身を整え、安全に保管できる状態にする。
その後、必要に応じて拵の製作を検討する。
一度にすべてを行うのではなく、段階を分けて修復を進めることも可能です。
複数振を修復する場合や、ご予算に限りがある場合には、
優先順位を決めながら一振ずつ整えていく方法も現実的だと思います。
■明細と参考価格について
最後に、お客様の個人情報を伏せた形で、今回の明細を掲載いたします。
記載している価格は、2023年8月時点の参考金額です。
現在は、銅・銀をはじめとする材料価格や工賃の改定により、
同じ内容でも価格が変動する場合があります。
同様の日本刀修理、白鞘製作、ハバキ製作、研ぎ直しをご検討の方は、
修復内容を考える際の参考としてご覧ください。
このたびは、大切なお刀の修復をご依頼いただき、誠にありがとうございました。






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